自動車にまつわるエンターテイメントを集めた「グランツーリスモ」が、久しぶりにシリーズの原点のようなワールドマップをひっさげて帰ってきた。カーライフという幅広いエンターテイメントをカバーして、レース、写真撮影、カーデザインなどのコンテンツを楽しみながら、自動車業界全体のさまざまなヒストリーも学べる作品として登場する。
カーライフシミュレーターとして『グランツーリスモ7』(以下、GT7)がどのような進化を遂げたのか、ドライビングシミュレーターとしてどのような進化を果たしたのか。なるべく初心を忘れずに、あまりマニアックな視点にもならないよう気をつけながら本作を見ていきたいと思う。なお、レビューにあたってはPS5版のDay 0パッチを適用した状態のバージョンをプレイしている。
ナンバリングとして正当進化した「グランツーリスモ」
目につく大きな要素は、2004年にPS2で発売された『グランツーリスモ4』以来とかなり久しぶりの登場となる「ワールドマップ」だ。さまざまなコンテンツにアクセスできる最近の作品のスタイリッシュなメニューも良かったが、カーライフとして遊ぶのであればワールドマップのほうが雰囲気も出る。コンテンツはチュートリアルとして機能する「カフェ」から広がっていく。
カフェでは「メニューブック」という形でクエストを受注することができる。レースイベントをクリアして報酬の車を入手するイベントがメインになるが、「スケープスで写真を撮影する」だとか、「チューニングショップで車を改造する」といったレース以外の内容もあり、メニューブックの内容をクリアしていくことで自然とゲームの仕組みや流れを学ぶことができる。本作はコンテンツ数が多く、何から遊べばいいのか悩みがちなので、プレイする道筋を示してくれるのは初心者にとってありがたいことだろう。カフェのクエストをこなしていく過程で、カフェに訪れる人物たちから自動車に関する歴史を学べるのだが、残念ながらそうした情報はあとから見返すことができず、少しもったいないように感じた。
カフェのクエストをクリアしていくことで、その過程で自然と新しい車を収集できるほか、ライセンスモードやサーキットなどの各種コンテンツが少しずつ解放されていく。収録されている車種は420種類以上と充実しており、ミッションなどをこなしていけば自然と100台ぐらいはすぐに集めることができる。そう考えると少なそうだが、大衆スポーツカーのバリエーションが増えているほか、ジックリコツコツと集める必要があるレジェントカーも数多く用意されているので、収集要素としてはかなり満足感が高い。
ミッション最初の指令は、恒例となっている中古車ディーラーへのお使いだ。そこでは中古車カタログのような画面が現れて、手頃な車を購入していく。ブランドセントラルに足を運べばさまざまな新車を購入できるが、お金が貯まるまでしばらくの間我慢だ。
お金を貯めるために、なるべく同じ車両で繰り返し走行するとボディから徐々につやが失われるため、定期的に洗車をしてやる必要がある。さらに走り込んだら性能が低下してしまうのでオイル交換やエンジンのオーバーホールも必要だ。UIの見た目こそ新しく生まれ変わっているが、車への愛情にあふれた内容は、ときには正直「めんどくさいよ!」と思うこともあるが、この子供に愛情を注ぐようなめんどうくささもひっくるめてグランツーリスモである。
こうした丁寧な誘導が初心者への遊びやすさへとつながっている一方で、途中の工程をすっ飛ばして、なるべく早く上位の難しいレースにも挑戦したいと思う筆者には少しわずらわしくも感じた。また、「おもしろそうなイベントはあとの楽しみに取っておきたい」という遊び方を筆者は好むので、そうした観点からもイベントをスキップできないのは少し残念に思えた。
シングルプレイにおけるメインコンテンツはもちろんレースイベントだ。本作ではゲーム開始時やオプションで3段階の難易度を選択可能になっており、ワールドサーキットでAIと勝負するレースイベントの難易度を調整できる。
最初に驚いたのがロードの早さだ。レーシングゲームというのは、レースイベントの読み込みは意外と時間がかかることも多いが、平気で待たされる。これに体が慣れきっていたため、本作のロードが3秒ほどで終わって「あれ?これでもう遊べるの?」と、感動を通り越して少し疑問符が頭に浮かんだほどだ。
サーキットは34ロケーション/90レイアウトを収録。基本的に『グランツーリスモSPORT』(以下、GT SPORT)に収録されているものが多く、個人的には慣れ親しんだサーキットが大半だった。そんななかで「トライアルマウンテン」や「ディープフォレスト」といった旧シリーズの人気コースが復活してくれたことはうれしく、さまざまなサーキットを楽しめる。ただ、今回はダートコースの割合が少ないのは残念なところで、今後のアップデートで本格的なヒルクライムステージなんかも登場してくれると嬉しいとろだ。
サーキットごとにサンデーカップ、クラブマンカップ、FRチャレンジといったシリーズでお馴染みのレースイベントが開催される。これは、例えば鈴鹿サーキットであればF1グランプリ、サルト・サーキットのル・マン24時間といったようなご当地レースイベントを選んでいくようなものだ。ただ、メニューでサーキットを選ばないと体験できるレースイベントの内容がわからないため、あとから特定のレースイベントを遊びたくなった場合に探すのが少々面倒なデザインとなっている。
ポリフォニーデジタルには振動の魔術師が存在し、ドライビングシミュレーターまたひとつ押し上げた
「グランツーリスモ」シリーズは、ドライビングシミュレーターとしてもリアルを追求しており、本作がもっとも注目を集めるポイントのひとつだろう。今回はPS5のコントローラーDualSenseでの評価に加えて、筆者は本作にあわせてFanatecの「GT DD Pro」を入手した。このステアリングコントローラーはタイトルにあわせて内部設定を調整しないと真価を発揮してくれない駄々っ子だ。レビュー時点では『グランツーリスモ7』用の設定がなかったため、今回はFanatec公式フォーラムからGT SPORT用の設定を使用した。
まずDualSenseでの評価だが、GT SPORTと比較して圧倒的に振動による情報量が増加している。DualSenseが陥りやすい微細なバイブレーションではなく、DualSenseが少し苦手なインパクトとわかる表現でプレイヤーに情報を伝えてくる。たとえばアンダーステア時には個性的な振動がダダダッと発生する。加えてDualSenseの場合はABS(アンチロックブレーキシステム)動作時の振動が発生して、振動の強弱でブレーキへの負担の強さやフロント加重の判断が可能なので、そこから車のコントロールに活かすことも可能だ。正直、振動でここまで表現力豊かなDualSenseは初めてなので少し感動した。
ABSの情報はステアリングコントローラーでも得るのが少し難しく、DualSenseでプレイする際のちょっとした利点となる。また、タイヤがスリップした際の微細な振動も感じられる。レーシングマシンに乗ると、アクセルやブレーキの重さも変わるので、従来より繊細なアクセルワークもやりやすくなった。
次にGT DD Proでの評価だが、コーナリング時のハンドルへの負荷やフィードバックの抜ける感じなど、状況に応じた基本的なフィーリングに大きな変化はない。リアが流れた際の負荷の反転や抜ける感じは自然でカウンターも当てやすい。フィーリングのベースはGT SPORTとGT7を比較しても極端に大きな変化はなかったが、DualSenseと同じように車両からの情報が大きく増えたのはすぐにわかる変化だ。特にアンダーステア時のタイヤの振動がよりハッキリと出るようになったことで、コーナリング時に車両がどこまで限界に近づいているのかがとてもわかりやすくなった。
また車の挙動自体も少し変化している。わかりやすいのがタイヤのシミュレーションで、コーナーの立ち上がり(加速)などでかなりホイルスピンしやすくなった。TCS(タイヤの空転を抑える装置)をオフにしても、GT SPORTではラフな運転をしたとしてもある程度乗りこなすことができていたが、GT7ではかなり丁寧なアクセルワークが求められる。
とはいえタイヤの温度管理やブレーキの温度管理は不要で、シミュレーターとしては相変わらずかなりとっつきやすい部類だ。タイヤの扱いが繊細になった反面、車からのフィードバック(振動や抵抗)の情報量が増しているので、結果として速く走るための運転は容易になったようにも感じる。
研ぎ澄ました自動車にまつわる映像美と、細かい部分も豊かになった環境表現
レーシングゲームは、PS5世代になり実写を「超えるような」と形容されるような映像美はもはや当たり前となった。GT7のレベルになると、どういった絵作りをするのか、どういった小技でプレイヤーを魅了するか、デザイナーのセンスがより重要となってくる。
グラフィック面で印象深いのは、時間変化によって全体が刻々と変化していく光と闇のコントラストだ。そのなかでも朝焼けや夕焼け付近はコントラストが落ち着くことで映像がマイルドになり、見た目からCGっぽさが抜けてよりリアルな映像として目に映る。
レースシーン全体の環境表現も豊かになっていて、車両がスピンすれば派手なタイヤスモークを巻き上げ、強めの接触が発生すれば細かいパーツが飛び散る演出が入る。本作のカーダメージは塗装面の傷といった簡易的なもので、走行に影響が出ることもないが、細かいパーツが飛散する演出があるだけでもずいぶんと臨場感が出る。タイヤスモークも同様で、白煙が派手になっているのでレースの激しさをも実感させてくれる。
天候の表現については、物理的にリアルに動かしているわけではないもののフロントガラスに落ちる雨粒の動きはよくできている。タイヤが巻き上げる水しぶきなどもリアルで、雨が強くなればタイヤが巻き上げる水しぶきで前方の車が見えづらくなり、画面がコーナーのクリッピングポイントなどが視認できなくなる。リプレイになると強烈な水しぶがさらに強く表示されるようになり、周囲の車がほとんど見えなくなるケースもあった。
天候変化自体は素晴らしいのだが、レース開始時のインフォメーションで路面の濡れ具合だとか、雨が降っているだとかのコンディション情報が提示されないため、天候が悪い際にどのタイヤを選ぶべきか判断できない点には悩まされた。レース開始前の画面ではサーキットの様子が映し出されており、雨が強く降っているようであれば基本的にヘビーレインを選べば良いと思うのだが、小雨なんかだと完全に運任せになる。せっかく導入されたのだから、レース開始前にもお天気レーダーを見せてもらえるとよさそうなので、今後のアップデートに期待したい。
以上のように、車を中心としたグラフィックは素晴らしいものばかりだが、意外とサーキット全体に目を通してみるとそういうわけでもなく、上空からサーキットを映し出すようなシーンでは「ジオラマかな?」と思ってしまうような箇所もしばしば目にとまる。コース上で車を走らせて見える範囲は気になるところは少ないため車を最高に輝かせてくれるが、それ以外の部分ともなるとまだまだ妥協しないといけない領域なのだろう。
GT7の環境表現はサウンド面でも楽しませてくれる。3Dオーディオに力を入れており、公式のPULSE 3Dワイヤレスでサウンドを聴けば、周囲を走る車から発せられるノイズの方向を捉えることが可能になり、激しい雨がルーフに当たる音は確かに頭上から聞こえてくる感じとなる。フロントタイヤの音は判断できないが、リアが滑れば後方かタイヤの軋む音が聞こえてくる。ライバルとの位置関係を多少なりとも音で把握できるので、臨場感が増すだけではなく対戦においても少なからず武器になってくれる。また音の方向性は若干失われるものの、普通のヘッドホンやヘッドセットでも3Dオーディオを実感できる。
レーシングゲーム初心者には厳しいセッティング
レースイベントの難易度はシミュレーターらしくやや難しめだ。難易度をイージーにしてもスピンやコースアウトなど、大きなミスを1~2回してしまうと初心者には挽回が難しいケースもある。だが、ブレーキやステアリングを「アシスト」設定にすれば、常にアクセル全開でもハンドル操作をすれば難なくコースを1周できるほどの強力なアシスト機能が働く。さすがにフルアシストだとイージーぐらいしかなかなか勝てないが、それでも十分ドライビングをしている気分を味わえるだろう。
アシストに頼りたくない場合は、車の改造である程度ゲームの難易度を調整できる。用意する車両の性能でこちらから難易度を調整してやるのだ。これもまた伝統のようなものだ。本作では自動車の性能がPP(パフォーマンスポイント)というポイントで評価付けされ、レースイベントには推奨PPが設定されているので、これと自身の腕前を目安に改造していけばよいだろう。
ただ難しいのは、PPが高いからといってサーキットを速く走れるというわけではない点にある。例えば同じPPの究極の直線番長カーと、究極のコーナリングマシンを作った場合は、圧倒的にコーナリングマシンの方が簡単にサーキットを周回できる。これは極端な例だが、PPではこうした車のアンバランスな部分まで完全に推し量ることができないので、車を改造する際は注意が必要だ。
そしてGT7では、このセッティングに関して爆弾を抱えていた。市販車を一定以上のパフォーマンスまでパーツ交換を行うと、オーバーステア(定常円旋回で内側に車両が向く/向きやすい現象)がかなり強くなりまともな運転が困難になる車両があった。パワーがありあまってリアがスピンするのではなく、ハンドリングのみで突如リアがグリップを失う、明らかに性質が悪く度を超えて扱いづらいマシンとなる。
最初に出会った問題児の1台はマスタングGT'15で、ひと通りのパーツ交換を行った段階で少しハンドルを切っただけでスピンしてしまう問題児が完成してしまった。ベース車は世界的に人気のマッスルカーとはいえ、パワーと足回りのセッティングの釣り合いどころではないバランスの悪さだ。ひとまずアンダーステア(定常円旋回で外側に車両が向く/向きやすい現象)傾向になるようセッティングをして多少落ち着いてくれた。
これまでのシリーズにおいて、車の単純なパーツ交換だけでここまで扱いが難しくなるようなことはなかったように思う。もしかしたらシミュレーションの精度が向上した結果かも知れないが、少なくとも足回りのパーツ交換をした際は、ハイパフォーマンスカーでも最低限扱えるようにしてあってもよいかと思う。
セッティングに関しては、オンラインにてセッティングガイドも収録される「Beyond The Apex」が発売日に公開予定となっているので、このコンテンツがセッティングの参考になることに期待したいところだ。かくいう筆者も、セッティングにそれほど自信があるわけではないので、Beyond The Apexを読むのを今からとても楽しみにしている。
GT SPORTを、ほぼそのまま継承したオンラインモード
オンラインモードは1週間に一度イベント内容が更新される「デイリーレース」、公式が開催する「公式レース」、ロビーを作りプレイヤー同士が自由に走行を楽しむ「ロビーマッチ」などがある。これらはGT SPORTの時代から採用されており、ショートカットペナルティなどの基本ルールもGT SPORTと同じ内容で引き継がれていた。
さらに新しいコミュニティの場として、一部のサーキットで常に公開されているオンラインスペース「ミーティングプレイス」が登場した。オンライン上に常に開かれているロビーのようなもので、誰でも自由に世界中の人々が出入りできる憩いの場だ。チャット欄でコミュニケーションを図るもよし、コースに出て一緒に運転の練習をするもよし。ほかのプレイヤーとのコミュニケーションを楽しみながら、自由な走行を楽しめる場所として常に解放されている。レビューのための事前プレイでは16人が出入りできるロビーを9つ確認することができて、ニュルブルクリンクなど人気の高いサーキットを確認することができた。
もっともプレイヤーで賑わうことになるのは、クイックマッチのように手軽にレースを楽しめる「デイリーレース」だろう。事前のタイムアタックレコードを指標にタイムの近いライバルたちと対戦することができる。
本作では新たにオンラインにもセッティングが本格導入される。各レースには最大PPが指定されており、PPの範囲に収まるように車を自分好みに調整してデイリーレースに使うことができる。セッティングに自信のあるプレイヤーはそれだけでライバルに差を付けることができそうだ。自分なりに車の性能を引き出して走ったのち、そこで初めてセッティングをどのようにするべきか考える必要がある敷居の高い要素なので、個人的には性能が固定された車両のレースも多く開催されてほしい。
少し残念だったのは、オンライン時のタイムアタックペナルティもGT SPORTの仕様が引き継がれていたことだ。GT SPORTではオンラインレース時に違反行為を行うと、指定された減速区間で自動で減速するタイムペナルティが科せられる。違反区間の先で違反行為を行った場合は1周周回してからペナルティを受けることになる。それがファイナルラップだった場合、ゴール後のタイムにペナルティが加算されることになる。それはいい。
問題はタイムアタック時のペナルティが、その周のタイムの抹消に加えて減速ペナルティも発生することだ。ペナルティが発生した場所によってはその周回で終わることもあれば、次の周回でペナルティが発生することもあり、2重3重のペナルティが発生することになる。次の周回に影響を与えるような不正があればペナルティが次周にまたがっても不思議はないが、そもそもタイムアタックでもレース用の減速ペナルティが存在することがペナルティを余計に複雑にしている。
ペナルティが発生した瞬間リスタートを行ってもいいのだが、それまで周回を重ねたタイムデータが消えてしまうため、不毛の1周を走るか、参考データを諦めるか究極の2択に迫られるため、タイムアタック時の緊張感は異常に高くなってしまっている。
永遠に眺めていられる「スケープス」と「リバリーエディター」
世界中の名所で車の撮影が楽しめる「スケープス」の背景は、特殊な環境で撮影された写真だ。普通の写真と違うのは、撮影した場所の光や影がデジタル情報として収録されており、車を置けば日の光や木の陰なんかが自然と映り込む。写真ではあるが立体的な構造物の情報も有しているのが特徴だ。そのため壁や柱などへは、車のヘッドライトの光や車体の影が構造物の形に合わせて反映されて、場所によっては3D空間なのではと錯覚するほどよくできている。
撮影できるスポットは増えていて、それに伴いランダムで場所を選べるなど使い勝手も向上している。GT SPORTでは、美しく磨き上げられた車を撮影するだけだったが、GT7ではあえて車を汚したり、傷を付けた状態で撮影できるようになった。それをうまく活用すれば、レース後の風景といったイメージ写真の撮影も可能だ。
ガレージには「スケープスムービー」が設置されており、スケープスの背景で車を走らせるデモ映像が流される。車がとても美しく輝き、個人的には撮影よりもスケープスの映像を永遠と眺めていたい。できることなら、シーンごとに所有している車がランダムで登場するともっと良かっただろう。
「リバリーエディター」は、ステッカーが貼れる場所が増えたり、車に貼ることのできるステッカーの上限数が増えている。元々GT SPORTでの上限枚数も極端に少なすぎるということはなかったし、よく利用する車にレーシングカーっぽいデザインを施すことで満足していた筆者には、GT SPORTから拡張されたリバリーエディターを活かすのは大変そうだ。
昔親しまれていたモードが真っ正直に返ってきた「グランツーリスモ」
全体的にGT7を見ると、カフェでゲームの流れを導いてもらったり、ちょっとした息抜きに音楽を楽しみながらドライブに興じられる「ミュージックラリー」など、初心者を意識した設計やコンテンツが多数見受けられる。
運転技術を学ぶことができる「ライセンス」に、コース上に置かれたパイロンをすべて倒せだとか、限られた燃料でなるべく長距離を走れだとか特殊なイベントにチャレンジできる「ミッション」など、最高評価でクリアしようと思うと、コアなファンも唸らせる高難易度コンテンツも充実している。
20~30時間ほどあればすべての種類のサーキットを開放可能で、その頃になるとミッションチャレンジも、自然と全種類解放されているはずだ。ただ、ライセンスやサーキットエクスペリエンスなど、ライセンスに近いコンテンツもサーキットごとに用意されているので、すべてをコンプリートしようと思うとかなりの時間が必要になりそうだ。
とはいえ、これらのコンテンツは良くも悪くも「グランツーリスモ」で、ゲーム全体の構成はワールドマップがなかった時代の作品も含めて、これまでのシリーズと比べて内容に大きな違いはない。機能拡張はされたが、スケープスやリバリーエディターもGT SPORTから大きな変化はない。それぞれのコンテンツがすでに完成されていると言えばそれまでだが、懐かしい「グランツーリスモ」がそのままの形で帰ってきたと喜べる一方で、復活した内容を見てみればシリーズで共通する定番の要素ばかりで、懐かしさはあっても新鮮味は少ない。過去のシリーズにあった監督になってAIドライバーを育成するコンテンツや、独自コースを作って遊ぶような本作独自の要素がひとつは欲しかった。