カーオーディオ製品の取り付け作業においての決まり事や注意事項を紐解くことで、カーオーディオの奥深さや面白さを伝えていこうと試みている当連載。前回は「デッドニング」とは何かを説明した。それに引き続き今回からは、これの作業内容を紹介していく。
なお「デッドニング」は、理論やセオリーが諸説ある。なのでこれから説明する内容は、絶対的なものではない。一般論として言われている事項を紹介していくが、細かな考え方ややり方はショップごとで変化する。
さて、「デッドニング」とは前回の記事の中で説明したとおり、クルマのドア内部の音響的なコンディションを上げ、ドアをスピーカーへと作り替えていく作業だ。つまりドア内部で起こり得るさまざまな問題が、発生しにくいようにしていくわけだ。
ちなみに、ドアの中で起こる問題には“元凶”がある。それはズバリ、「背圧(はいあつ)」だ。「背圧」とは、スピーカーユニットの裏側から放たれる音エネルギーのことを指す。これがドアの中で、あるいはドアの外側に漏れたり伝わったりして悪さをしでかす。
なので「デッドニング」ではまず、この“元凶”の影響がもっとも大きく及ぶ場所への作業が行われることが多い。その場所とは、スピーカーの奥側の鉄板だ。ここに対策用の部材が貼られることとなる。
用いられることが多い部材は3つある。「吸音材」「拡散材」「制振材」、これらだ。
「吸音材」とはスポンジ状になった部材で、これをスピーカーの奥側の鉄板に貼り、「背圧」を吸収することが目指される。要は「背圧」のエネルギーを小さくしようとするのだ。そして「拡散材」とは軽く堅いコルクのような素材等でできていて、表面が凸凹している。これをスピーカーの奥の鉄板に貼ると「背圧」のエネルギーを散らせるので、「背圧」がスピーカーに跳ね返りにくくなる。
というのも「背圧」がスピーカーへと跳ね返ると、スピーカーの振動板にぶつかり振動板の動きを阻害する。「拡散材」は、そのストレスを緩和する効果を発揮する。なお「吸音材」もまた、「背圧」の跳ね返りを少なくする役目も担う。
そして「制振材」とは、ブチルゴムやアスファルト系の素材がアルミシートに貼り付けられてできていて、これをスピーカーの奥側の鉄板に張ることで鉄板の共振の抑制が図られる。鉄板も、振動すれば少なからず音を発する。その音が、スピーカーの表側から放たれる音を濁す。しかし「制振材」を貼れば、鉄板が鳴るのを抑制できる。
今回は以上だ。次回は、この後に行われる作業内容について説明する。お楽しみに。