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発達障害とは?③~ADHDの対処 「誰にでもある」「知らないとわからない」 - 成年者向けコラム | 障害者ドットコム unsplash-logo

◀過去の記事:発達障害とは?②~ADHD 基礎ワードと実例

前回のコラムでは、ADHDの「特性」についてご紹介させていただきました。ADHDの人に多くみられるとされている特性「不注意・多動性・衝動性」について、いくつか具体例を取り上げてお伝えしましたが、3部作となるコラム「発達障害とは?」の最後となる今回は、特性への「対処」について、簡単にですが取り上げたいと思います。

特性の「対処」とは?

ではここから、特性への対処・その取り組み方について少し経験を交えてお伝えします。

私の場合、子どもの頃から一番困ったのは睡眠です。長く寝すぎてしまうこと(過眠)と寝つきが悪くなかなか眠れない・寝ても目が覚めてしまうこと(不眠・中途覚醒)が両方あり、自分の体調コントロールが出来ず、結果として生活リズムの乱れから体調を崩しやすい子どもでした。その当時は発達障害についてほとんど知らなかったので、なんとか自力で解決しようと家族に協力してもらって道具を買い揃えてみたり、睡眠に関する本を読んで試してみたりもしたのですが、全く効果がない、あるいは一時的な効果があっても根本的な改善には至らず、途方に暮れてしまうこともありました。誰でもそうですが、自分の弱いところや欠点はなるべく直したいと思うものです。人に迷惑をかけてしまったり、そのせいで自分が困ることがあれば猶更で、なんとかしようとします。そういう時例えば、気軽に話せる知り合いに相談したくなるかも知れません。人に話す、自分の特性を理解してもらうことはADHDの対処法として勧められていることでもありますが、ここには大きな落とし穴があります。

特性は行動など目に見える形で現れますが、原因は実は脳の機能にある、というお話を最初のコラムでしました。しかし、目で見て分かる違いがあるわけではないので、外見だけでそれを判断するのはほぼ不可能です。ADHDの診断を受けた時、最初にぶつかるのがこの壁です。特性によって生じる問題は当人にとっては辛いものですし、周囲の人に迷惑をかけるものである一方で、「誰にでも経験がある失敗や短所」だとも言えます。実際、ADHDの話を全く知らない人に1からして、ほぼ100%の確率で相手から言われる言葉は、「それって誰にでもあることじゃない?」です。これが、ADHDの人が非常に苦労する難題です。

自分を知ること(「自己理解」)の重要性

ADHDの人が抱える問題は、一見しただけだと特別珍しいものではないかも知れません。朝起きるのが苦手だとか、忘れ物が多いとか、つい考えなしの行動をしてしまう、ということは、時と場合によればだれにでもあり得ることでしょう。時には善意から、「こういう方法を試してみたら解決した」とアドバイスしてくれる知り合いもいました。 しかし、忘れてはならないのは、発達障害のある人は「少数派」だということ。たくさんの人に効果があった、定型発達の相手にとって有効だった方法でも、場合によってはADHDの人には逆効果、ということもあります。ADHDの特性は、生活のありとあらゆる場面に現れます。いくつかの特性が複合して一つの状態として現れたり、逆に、一つの特性があらゆる場面で影響している場合もあり、その原因を自分の力だけで、あるいは専門知識のない人が見つけ出すのは非常に困難です。その状態でアドバイスをすべて受け入れてしまうと、効果がないだけでなく、うまくいかないことで自分を責めてしまったり、逆になんとか対処しようと無理をしてストレスを貯めてしまったりすることもあります。ちょうど、病気の時に合わない薬を飲むようなものです。誰かにとって効果のあった方法でも、根本原因が違えば当然自分には効果が表れないばかりか、むしろ問題のなかった部分まで傷つけてしまうことにもなりかねません。

では、どうやって自分に合ったやり方を見つけることが出来るのでしょうか?専門知識のある人に相談する、ということは勿論ですが、何よりも一番大事なことは、自分が「自分の特性を理解すること」です。辛い体験や失敗、今まで自分が経験してきた出来事と向き合い、背後に隠れた本当の原因に気づくことで、初めて自分に合った方法が見つかるようになるのです。それを、自己理解と呼びます。

最初に、ADHDの治療とは「障害そのものの治療」というより「対処を学ぶ」ことだと書いた通り、問題となる状況を引き起こしてしまう脳機能そのものを変えることは出来なくても、自己理解を進めると、新しい側面が見えてきます。発達障害全体の定義の話の中で、「脳の発達の仕方に生まれつき凸凹がある」という説明がありました。逆に言えば、人より苦手な分野と、人より得意・強みとなる分野がある、ということです。自分の特性、つまり「周りの人にはなくて、自分にはある」個性を知ることは、自分に起きる問題の原因を見つけられるだけではなく、実は自分の得意なことを発見することでもあります。周りが見えなくなってしまう集中力や、周囲の状況や出来事に気づくことが出来る頭の回転の速さ、ほかの人と違う発想などは、上手に用いるなら強みになります。

特性への取り組み ~「対処」と「配慮」~

では具体例を少しご紹介してみたいと思います。

まず、ADHDの特性への取り組みは、大きく「対処」と「合理的配慮(以下、「配慮」)」に分けられます。「対処」は支援者と話し合いながら、患者本人が取り組む手法です。例を挙げると、

など、人によって様々です。

「配慮」は周囲の人に求める支援・ルールの変更・環境の調整などのことです。ただ助けてほしい、ではなく、どういう特性が自分にあり、苦手なことと得意なことをしっかり把握したうえで、苦手なことをカバーするために協力をしてもらうことを目標に、医師や支援事業の職員と話し合って作成することが出来ます。こちらの例を挙げると、

などです。「合理的配慮」という言葉の通り、これは特定の人を差別・ひいきするためのものではなく、障害の有無に関係なく、ひとりひとり違った個性や得意苦手がある中で、誰もが平等に権利・機会を得るための考え方です。対処と配慮は関連しているものが多く、何よりも自分の特性を知ってもらうことが第一に重要なこととなります。理由が分からなければ違和感を覚えることでも、事情を説明し理解を得ることで、周囲の人のストレスも減らせる、という効果もあります。

「自分」として生きる

私自身経験がありますが、発達障害の人の多くは、自分の「生きづらさ」の原因がわからず、自分を責めてしまったり周囲に迷惑をかけたことで心に傷を負ってしまうことが少なくありません。自分でも原因が分からないので似た失敗を繰り返してしまい、マイナスの経験が蓄積することで「こんな自分はダメだ」「自分は周囲に受け入れられていない」という感覚が刷り込まれ、自分を追い込んでしまう負のループから抜け出せなくなることもあります。そのせいで、前の記事でも少しお伝えしましたが、人によって二次障害としてうつや不安障害を発症する場合もあります。

また、失敗のイメージが強く心に根付いてしまって、新しい考え・方法に対して受け入れがたく感じることもあります。私自身特性の理解と対処を進めている途中の段階であり、自分がこれまで何とか自分だけの力で対処しようとするうちに身に着けた「こだわり」のあまり、なかなか支援者の方のアドバイスを受け入れにくく感じることがあります。

自分がこれまで積み上げてきた経験則やルールをすべて否定する必要はありません。しかし、特性に応じた支援を受けることができれば自分の力を十分に発揮できる可能性があり、自分の特性を理解していくと、「自分の本当にやりたいこと・好きなこと・得意なこと」を発見することが出来るかも知れません。新しい方法を試すこと、自分の辛い経験を人に伝えることは決して簡単なことではありませんが、「知ること」「知ってもらうこと」が、自分に合った生き方を見つける一番の近道だと思います。そうすることで今まで気づかなかった強みや長所に気づき、それを生かして誰かの役に立つことが出来ることもあります。そうやって「自分を大事にする」考え方を身に着けることが、障害特性への対処の最大の目標です。時には目の前の問題に圧倒されてしまうこともありますが、そういう時は、「全部を完璧にする必要はない」「今自分の出来ていることを、きちんと評価してあげよう」という私の通っている就労移行支援事業所での言葉を思い出すようにしています。

長くなりましたが、発達障害、特にADHDについて、説明させていただきました。実際に今その障害特性で苦労していらっしゃったり、それを改善しようと努力されている方や、ご家族や友人を支援しておられる側の方に、この記事が少しでもお役に立つことを願っています。

参考文献

【Medical Note 「ADHD」】 https://medicalnote.jp/

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