音質はトップクラスだけど…?
フランスのオーディオメーカーDevialet(デビアレ)のスピーカーといえば、音質も値段も爆音っぷりもずば抜けているイメージがあるかもしれません。そんなデビアレから登場したワイヤレスイヤホン「Gemini」についても、どうやら同じことが言えるみたいです。
米Gizmodoの本音レビューによると、Geminiの強みはノイズキャンセリングとのことですが、ちょっとした弱みもちらほらあるとか。一体どんなものなのか、さっそくチェックしてみましょう!
まずは最も気になる価格について。たとえばBOSE(ボーズ)の「QuietComfort Earbuds」やSONY(ソニー)の「WF-1000XM4」はいずれも3万3000円。Apple(アップル)の「AirPods Pro」は3万580円。ノイズキャンセリングに定評のあるHuami(ファーミ)の「Amazfit Powerbuds Pro」やSamsung(サムスン)の「Galaxy Buds 2」も1万7000円程度。…なのですが、そんななかでもデビアレのGeminiは4万1800円とぶっちぎりの高値を見せつけています。
もともとアクティブノイズキャンセリング(ANC)はボーズやソニーが得意としていたのですが、これだけの価格差ということは、きっとそれ以上に得られるものがあると思っても良いのでしょうか…?
Devialet Gemini
これは何:高価なアクティブノイズキャンセリングイヤホン。
いくら:日本国内価格 4万1800円。
好きなところ:アクティブノイズキャンセリング(ANC)も音質も超良い。バッテリー寿命が長め。大きめだけど、つけ心地は快適。
好きじゃないところ:接続、外部音取り込みモード、値段。
価格もデザインも大胆!
価格だけでなく、デビアレの製品はデザイン性もユニーク。これは今回のGeminiもそうですが、「Phantom」、「Phantom Reactor」、「Phantom I」など同社スピーカーを見ても明らかかもしれません。
Geminiの大きさは38×18×15mm、重さは6g。ソニーのWF-1000XM4と同じようなサイズ感で、ボーズのQuietComfortと比べるとやや大きめということになります。ただ、フラットな形状のおかげで耳から飛び出て見えることはなく、Jabra(ジャブラ)Elite 65tと比べると良い感じに収まっている感じがあります。
フィット感に関しては、シリコンチップが4種類(XS〜Lサイズまで)付属します。ちょっと小さめに作られているみたいで、私は他の機種ではMを使用していますが、GeminiではLがちょうど良いです。
デスクワークなどで使用するならサイズ・フィット感ともに快適です。が、運動中の着用については、個人的にはあまりおすすめできません。というのも、ランニング中に何度か使ってみたら、ちゃんと耳のなかに留まってくれているのに、落ちてしまうかもという感覚がありました。また、防水・防汗性能はIPX4で、運動中の汗や大雨には耐えきれなさそうです。
あと、イヤホンだけでなくケースもガッツリ大きめで、AirPods Proと比べたら2倍ほど厚みがあり、(iPhone 12 Pro Maxを片手使いできる私でも)このケースは手のひら全体を覆うくらい大きいです。このため、パンツのポケットに入れて持ち歩くのは難しいかもしれません。
音質は超良いけど、ノイズキャンセリングは常時オン必須!
外見については多少気になるところもありましたが、中身はどうでしょう。Geminiの左右のイヤホンは10mmドライバー搭載で、同社いわく再生周波数帯域は5Hz〜20kHz。
アクティブノイズキャンセリング機能のために、独自のアルゴリズムや設計が施されているとのこと。「Low」、「High」、「Plane」の3段階のモードがあって、「High」設定にしたときはふだん聴こえていたエアコンの音も、冷蔵庫の音も、夫がタイピングしているときの音も、サーっとほぼ聴こえなくなりました。オーバーイヤー型のアクティブノイズキャンセリングヘッドホンには敵わない(というか、どのイヤホンも勝てない)かもしれませんが、AirPods Proと比べるとGeminiの勝ちだといえそうです。
一方、外部音取り込みモードというのもあるのですが、こちらは結構ホワイトノイズを拾うので便利というより余計に気になっちゃう感じがしました。「Low」、「High」と2段階設定できるのですが、いずれも屋外では風の影響を受けやすく、散歩程度なら良いですがやはり運動中には向いていないのかなという印象です。
また、(ノイズキャンセリングでも外部オン取り込みでもない)ニュートラルモードもあって、全体的には問題なさそうですが、低音が強めの音楽を再生したときは例外。ノイズキャンセリングオンと比べると音質がガクッと落ちる感じがありました。以上から、ノイズキャンセリングは常にオンにしない手はないんじゃないかなと思っています。
さて、音質については今までいろいろなものを試してきましたが、ワイヤレスイヤホンのなかでもトップクラスだといえます。エクソの「Monster」やビリー・アイリッシュの「Everything I Wanted」を再生すると、ドンドンとした低音もキツくなりすぎず滑らかだったのが印象的。D.O.の「I’m Gonna Love You」のようなアコースティックな楽曲ではボーカルが豊かに響いて聴こえたり、ミツキの「Your Best American Girl」のようにボリュームが激動するのが特徴的な楽曲では、ほかのスピーカーやヘッドホンを押しのけるほどの音質の良さに圧巻。定位感はそんなに幅広くはないのかもしれませんがそれでも十分優秀で、AirPods Proを使って同じ曲を何度も聴いてみましたがGeminiの圧勝です。
同じく通話品質も安定しています。Web会議に何度か使ってみましたが、同僚から声が小さいと言われることも、聴き取り違いをされることもなかったです。
バッテリー寿命に関しては、6時間連続再生可能で、ケース充電使用だと追加で24時間使えるようになっています。2週間(ランニング中、料理中、雑用中、掃除中、通話中などで)使っていますが、今のところケースの充電をする必要はなし。まだ35%残っています。
余計な機能はないけど、ちょっと作動が気になる
アプリはとってもシンプルで、タッチコントロールの編集、プリセットのイコライザーオプションの調整、アクティブノイズキャンセリングや外部音取り込みモードの設定、バッテリー残量の確認ができるようになっています。ほかに何ができるかというと…実は以上です。個人的にはこれで十分ですが、アプリでいろいろやりたい人にとっては物足りない感じがあるかもしれません。
操作感についてはちょっと思い通りにいかないなという部分もあって、一時停止(イヤホンを外しても音楽が流れっぱなしになっていて、また耳につけると今度は一時停止する)や、タッチ操作(音声アシスタントを使うのに2度タップするも、長押しと思われてモード切り替えになる)といった問題が気になることも。ただ、ちゃんと正常に機能してくれることもあるので、大した問題ではないのかもしれません。でも急いでいるときは「ちゃんとしてー(汗)」って思っちゃいます。
また、iPhone、iPad、パソコンなど複数のデバイスに接続することもできるのですが、このプロセスがあまりスムーズではない印象です。というのも、イヤホンを耳につけてからBluetoothメニューを開いて接続しようとすると(一度も)うまくいかず…。ケースに戻し、蓋を閉めて、開けて、Bluetoothボタンを押してから、Bluetoothメニューに行くというやり方をしています。この点は自動的に作動してくれるAirPods Proの方が心強いなと思います。そんなことから、音質はGeminiの方が良いと分かっていても、ついAirPods Proに手が伸びることもしばしば。
それから、使い終わってケースに戻した後も、まだパソコンに接続された状態になっていることもありました(パソコンで動画を再生しようと思ったら音が出ず、Geminiのケースの方から聴こえてきてびっくり)。手動で簡単に接続解除はできるわけではあるんですけどね、ちょっとだけ気になりました。
奮発買いする価値はある? ない?
ちょっと辺りを見回してみると、ボーズのQuietComfort Earbuds、ソニーのWF-1000XM4、Master & Dynamics(マスター&ダイナミック)のMW08など、お金を出す価値のあるイヤホンはいくつもあります。
結局のところ何を重視するのかにもよりますが、つけ心地が(わずかながら)もっと快適で、フラットな形状が好きな人は、Geminiと相性が良いかもしれません。音質に関しては(Geminiもトップクラスではあるのですが)このレベル感だと完全に好みで分かれそうです。たとえばソニーやボーズの音質に耳慣れしている場合は、そのまま好みのメーカーのものを選んだ方が無難だといえます。
全体的にデビアレのGeminiは、ちょっと高価でも平均以上のノイズキャンセリング機能、音質が良い(ただし、それ以上のものはなくても大丈夫という場合に限る)という人にとっては大いに検討する価値がありそうです。